大阪府豊中市
南桜塚1-4-2
06-6852-4041
|
|
|
|
きねやはんのまるごとアート vol.7より |
関空発、上海経由カトマンドゥ行きの出発ロビーのベンチは
ほとんど日本人の若い旅行者で埋め尽くされていた。
出発ロビーの最前列には色鮮やかな民族衣装をアレンジした制服姿の
ロイヤル・ネパール航空スチュワーデスが二人、背筋をスッと延ばして
待機している。チベット系高地民の女性がつけているようなカラフルな制服
の前掛けは、暮らしと伝統を醸し出したデザインとなっている。日航の
スチュワーデスも一曹のこと、丹後縮緬に割烹着だったらええなぁ。
タラップ降り際、火打石をカチカチやってくれて、
「お兄さん、しっかりー、気をつけやっしゃ。」 「おう、おめえもな。」
「帰りにはまた笑顔を見せとくれ。」 「がってんだ。」
なんやら銭形平次になってしまった。
|
|
現地時間の19:40、夕闇の暗雲垂れる中、RA412便はカトマンドゥ盆地のトリブヴァン空港に着陸した。
タラップに出ると生暖かい湿った空気が頬を撫でた。両替の手際の悪さに少々苛立ちながらも、その間にわたしと同じ一人旅の
日本人男女二人と示し合わせて、一緒にホテル探しをしようということになった。はきはきとしっかりした喋り方をする男性は、
30歳位の高校教師で吹田に住むO君、おとなしい色白美人で今年就職したばかりの埼玉のOL、Sさん。
日本人はすぐに群れるというが、わたしたちは10秒で群れた。
空港の外に出ると、20人程の客引きが我先にとわたしたちを取り囲み、怒鳴り声を上げながら自分の車に引っ張り込もうとする。
ぐずぐずしていたら三人ばらばらにさせられてしまう。迷っていても埒が明かない。
「90ルピー。モシ、ホテル ミテ OKナラ タクシー タダデイイ。」
こま切れのような日本語を信じて、わたしたちは「それ乗れ〜」とまるで夜逃げでもするかのように他の客引きを残して
その場を走り去った。ホントに商売は口一つだ。雨上がりの泥道をゆっさゆっさ揺れながら車はスノーライオンゲストハウスと書かれた
看板の前で止まった。6階建てのがっしりとしたきれいな建物だ。客引きの兄という男がフロントにいて日本語で、
「イラッチャイマチェ。」といった。ネパール人は「さしすせそ」が「ちゃちちゅちぇちょ」になる。
顔を見ると、加藤 茶にそっくりだ。あちこち部屋を見ながらO君は相手がへとへとにギブアップするまで値下げ交渉を続けた。
わたしのような優柔不断な者からすれば、「もういいやんか」とお互いにこにこ顔で決着着けたいところだが、彼に言わせれば
それが日本人の良くないところらしい。結局、O君とわたしは4階のゆったりとしたツインを一泊二人で8ドル、Sさんはシングルを5ドルで
借りることになった。これでようやく寛げると、シャワーの栓を捻るとなんと茶色の水が出てきた。しかし、フロントに文句は言えない。
もう深夜にかかろうというのにわたしたち三人は屋上のテラスを陣取り、瓶ビールラッパ飲みで乾杯し、改めてカトマンドゥ到着を祝いあった。
変化の早い雨季の雲間から、星々が遠慮がちに顔を覗かせている。北の峰の中腹には世界最大の仏塔を誇るボダナートテンプルの
ライトアップが畏怖堂々と街を見下ろしている。街の家々の明かりはキャンプ場のカンテラのようにか細いが、至る所、犬の鳴き声と
赤子の泣き声がこの街を不夜城にしている。
13年振りに訪れたカトマンドゥは人も建物も驚くほど増え、なんやらせわしなくなったようだ。
|
その@ そのA そのB そのC そのD そのE そのF そのG
■ ■ 皆様からの感想をお待ちしてまーす!
info@kineyasuehiro.com ■ ■
Copyright (c) 2003
Kineyasuehiro All Right Reserved.
|