大阪府豊中市
南桜塚1-4-2
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きねやはんのまるごとアート vol.3より
 
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 しばしの瞑想を終えて、大伽藍の一つ一つを参拝し、比較的人気の少ない阿弥陀さまのまします極楽殿の前で、スケッチブックを開くことに

した。
 

 話は飛ぶが、わたしは大学一年の時に、8ミリ映画で「魔性極楽殿」というのを作ったことがある。川西市の小高い山に天童寺という寺が

ある。その寺の住職の娘と友人であったことから、本堂を撮影に使わせてもらうことができたのだが、それは3分の短編で、ある剣士が

お堂の中で座禅をしている。そこへ真っ赤な肌じゅばんの胸元をはだけた女が現れる。おどろおどろしい太鼓の音が鳴り、剣士の瞼が開く。

突如、背後から女が襲いかかる。さっと身を翻し、刀を抜く剣士、その刀の先をべろりとなめる女、恐怖のあまり剣士は刀を闇雲に振りまくる。

女は数メートルも飛び上がったかと思えば右に左に剣士を翻弄する。そして終に剣士は首を絞められて死ぬ・・・というものであった。

 学生の間では結構受けたと思うが、当時学科長であり、かつて溝口健二の女房役といわれた脚本家の依田義賢は酒の席でわたしに

言った。

  「君ねぇ、魔性の女というのはねぇ、ああいうふうに描いちゃいかんよ。始めはもっとしおらしく、こう、三つ指ついてね、いらっしゃいましー、

と、その後で豹変させない と・・・」その時わたしの頭の中で、田中 絹代が三つ指ついていた。懐かしい思い出である。



慶州 佛国寺



 そうこうしているうちに、わたしの身体はすっかり冷えてしまった。思い出したように尿意を催し、一目散でホテルを目指す。

 大浴場の湯船からは雲海の隙間に暮れ行く日の光が差すのが見えた。明日は晴れる。。 


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